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バンコク 道のり遠い国民和解

2010年09月16日

 タイのプミポン国王はこのほど入院先のバンコクの病院で内閣改造に伴う新閣僚の認証式に臨んだ。「強い意志を持ち、職務を遂行してほしい」と訓示したものの焦眉(しょうび)の急となる騒乱後の国民和解には触れずじまいだった。

 国民の絶大な敬愛を集める国王は過去の政治危機で調停役を担った。だが、今回の騒乱では沈黙を守った。82歳という高齢による衰えや王室の政治利用を嫌ったとの指摘もあるが、その胸中はうかがい知れない。

 確かなのは政府側がタクシン元首相やデモ隊幹部の真の狙いを「王政転覆」と非難したこと。「王政」を「国家」に置き換えると、民主化勢力を批判するミャンマー軍事政権の常とう句になる。

 強制排除の前日朝、デモ隊占拠地では国歌が流れ人々は国家や国王への忠誠を示すように起立し頭(こうべ)を垂れた。染みついた立ち居振る舞いは、王室を贔屓(ひいき)の引き倒しにしかねない政府への無言の抗議にも見えた。 (林浩樹)