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ロンドン 解明できぬ立ち位置

2010年09月23日

 殺人や強姦(ごうかん)など重罪の事件だけを審理するロンドンの中央刑事裁判所「オールド・ベイリー」の一号法廷に驚いた。被告よりも前、裁判官の近くに記者席があるではないか。

 日本では高い位置に裁判官が座り、斜め左右に検察官と弁護士、真正面に被告、その後ろに記者や市民が座る傍聴席がある。

 英国でも、新しい法廷はこの形に近いが、悪名高い数々の犯罪者を裁いてきた歴史ある一号法廷は違う。普通なら弁護士の位置に記者席。その後ろに陪審員、向かい側に検察官と弁護士が並ぶ。

 さらに独特なのが被告席。記者や弁護士らを間に挟み、裁判官の正面には床から数メートル突き出した被告用の特別な台がある。検事や弁護士を見下ろし、裁判官と比べてもわずかに低いだけだ。

 被告の人権を守るとの意味に違いない。そう感心していると、「被告の顔がみんなによく見えるため」と裁判所職員。うーん、どうもよく分からない。(有賀信彦)