2010年10月12日
すたすた…とホテルの庭を駆け抜ける小動物を見て驚いた。ワシントンの公園を走り回るリスではない。立ち止まって振り向いた顔に思い当たった。マングースだ。
カリブ海に浮かぶ米領バージン諸島で最大のセントクロイ島の北西部デイビス・ベイ。1960年代から工業化が進められたこの島だが、緑濃い山と青い海の間にコテージ(小屋)が並ぶホテルの周りは民家もなく、まだまだ自然が残る。「サトウキビ栽培のため持ち込まれた。プランテーション(大農園)は廃れたけどマングースが残った」と若い黒人のタクシー運転手。
島の歴史をひもとけば、大農園を支えた奴隷制が廃止された後の1884年、ネズミ退治のため導入。肝心のネズミは減らず、ヘビや大型トカゲのイグアナが激減したと研究者は指摘する。毒ヘビのハブの駆除を目的に1910年にマングースを移入し、生態系に影響を及ぼした沖縄本島とそっくりな話だ。(嶋田昭浩)