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ソルトレークシティー 『禁酒の街』から転身

2010年10月22日

 街のレストランに入り、まったく期待しないで「地ビール、ありますか」と尋ねたところ、あるわあるわ。女性店員はずらずらと五種類の地ビールを紹介し始めた。ここは全米で最も酒が飲みにくいはずなのに…。

 飲酒の戒律が厳しいモルモン教。総本山がある米西部ユタ州のソルトレークシティーは、ひと昔前までビールのアルコール分は3%程度に抑えられ、住民はバーでも「飲酒許可証」を見せなければならなかった。

 ところが目の前に出てきた泡立ち豊かな黒ビールは、アルコール分5%以上。店員は「9%もありますよ」と得意げな表情だ。

 2002年の冬季五輪開催で酒類の販売制限が緩められ、昨年にはさらにバーなどの飲酒制限を緩和。州の地ビール振興策もあり、結果的に郷土色豊かなビールが並ぶことになったという。

 「酔っぱらいのいない街」からの華麗な転身か。長い出張をほろ酔い気分で締めくくられた。(阿部伸哉)