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長春 理想の街…失う礼節

2010年10月28日

 4年半ぶりに訪れた中国吉林省長春。急成長する中国の街は、ごぶさたすると別の街に来てしまったかのよう。

 旧満州国の首都として日本人が都市造りをした長春。幅広の幹線道路に巨大ロータリー。当時、市の道路担当者は「10年間は渋滞問題は起こらない」と豪語していた。

 時は流れ、モータリゼーションは予想以上に進み市の中心部は大渋滞。金正日総書記の訪問が影響かと尋ねると、市民から「毎日のことだ」と笑われた。「東京が果たせなかった理想の街が、長春で造られていた」なんて原稿を書いたが、残念ながら昔話のようだ。

 タクシーに乗るのも一苦労。人の良かった長春人が近距離客を乗車拒否。乗車すると今度はノロノロ運転で相乗り客探し。タクシー不足を補う知恵かもしれないが、小遣い稼ぎにしか思えない。衣食足りたが経済競争で礼節は失われてしまったのか。 (小坂井文彦)