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モスクワ 敗者にならない知恵

2010年10月25日

 モスクワで、ある反政府デモの開始前、顔見知りの人権活動家のおじさんが警察官に何やら尋ねていた。手にしていたのは「プーチンは国民の声を聞け」と書いたA4判の紙。これを掲げたら拘束されるかどうか、相談していたらしい。

 ロシアで反政府デモが当局に許可されることはめったにない。強行すれば、拘束者が出ることも珍しくないが、デモ側からみれば、騒ぎが大きくなるほど訴えをアピールできる側面もある。おじさん自身、何度か拘束されたことがあるが、暴力ざたを避け、うまく捕まるには当局の“怒り”の一線を見極めることが重要とか。

 結局、その日は10人余りが拘束されたが、おじさんは無事。「用事があるんで早く帰りたかった」と大騒ぎは控えたという。

 ふと、日本の喜劇でよく聞くセリフを思い出した。強者に敗れたようにみえても決して負けを認めずに言う。「今日はこれぐらいにしといたるわ」 (酒井和人)