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サンフランシスコ 「虫の声」は「餌の声」

2018年12月04日

 ♪秋の夜長を鳴き通す ああおもしろい虫のこえ-。そんな季節になった。子どものころ、夜店で買ってもらったコオロギかスズムシを虫かごに入れていた覚えがあるが、当地では、これら虫たちに日本におけるような親しみを感じていない。

 サンフランシスコのご近所さんらに聞いてみた。いずれも草木のある土地で育った人たちで「カントリーボーイ(田舎の子)」を自称する人もいる。コオロギが鳴くのを聞いて「嫌な感じはしない」「一般の人たちも同様だろう」とのこと。

 しかし、捕まえたり飼ったりとなると様子が違ってくる。飼った経験について聞くと、おしなべて「何でそんなことをするのか」という反応を示した。ある人は、「自分も、自分の友達も、自分の子どもたちも、虫は飼わない」と言う。

 かごに入れてまで虫の声を聞こうという文化はないようだ。ある人は「アジアではコオロギを食べるそうだ」と言ったが、話題の行き着くところはそんなものだろう。ペットショップに行けばコオロギを売っている。ただし、爬虫(はちゅう)類の餌。ここでのコオロギは、それ以上の何ものでもない。 (岡田幹夫)