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ロンドン できる範囲でやると

2011年02月10日

 ロンドンを訪れた友人が在来線の駅でアナウンスがないのに感嘆し、こう言った。「日本のように騒々しい音がなくて素晴らしい。洗練されている」。あえて案内の音声を流さず、後は自己責任。そういう解釈だ。

 ある日、A駅からB駅に乗り、翌日はC駅から違う路線でB駅へと向かった。すると、A駅の線では案内は何もなかったが、C駅の線では車内の電光掲示板に何度も駅名が表示され、音声はうるさいほどだった。

 自己責任説は怪しくなったが不統一の理由が気になる。支局の助手に聞くと「日本人は『やるなら完全に』ですが英国人は『イフ ポッシブル(できる範囲で)』です」。

 この説明がおおむね正しいことが、証明された。わが家の水道メーターが壊れて断水し水道会社は言った。「8時間以内に修理します」。助手の言葉が浮かんだ。案の定、家に来たのは26時間後だった。(有賀信彦)