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ロンドン 何を読むのも堂々と

2011年02月17日

 ロンドンで一度も目にしたことのないのがブックカバー。地下鉄やカフェ、公園…どこでもだれも、本にかぶせていない。

 日本でブックカバーを使う訳は何か。本を大切にしたいのもあるが、たぶん一番の理由は、どんな本を読んでいるのかを隠すため。「今ごろあの本を? あの人があんな本を! そんなふうに思われたら恥ずかしい」と他人の目を気にする。

 逆に考えれば、英国人は無頓着ということになる。そこで、ロンドンの知人に聞くと「読む側が恥ずかしがる必要はない。恥じるべきはそんな内容の本を書いた作者。だからブックカバーは必要ない」との答え。

 「読者は選んで本を手に取るのだから、作者と同類では」と納得いかないが、一つ思い当たることも。地下鉄で、タブロイド紙の大きなヌード写真のページを広げて読む人をたまに見かける。その態度は実に堂々としたものだ。尋ねれば、例の論理を披露するかもしれない。(有賀信彦)