2011年03月11日
知人と約束した料理店に急いでいた。歩道の前方を若い男性が白いつえを使い歩いている。追い抜こうとしたが歩道は先にいくほど狭い。一番良いのはこれと思い、彼の手を取り肩にかけ、行き先を聞いた。
「食事をしたいが、金がない」。想定外の答えに立ち止まった。まさか会食に連れて行くわけにもいかない。家はどこか尋ねるとかなり遠い。声を掛けた手前、置いてもいけない。自分がどこにいるかも分からないようだ。
ここは人助けしようと腹を決めて近くの食堂に連れて行き料理を注文、食事代とタクシー代も渡し店員に後を頼んで店を出ようとした時だ。
女主人に「保護者がついていてくれ」と呼び止められた。気の毒と思って連れてきた事情を説明しても女主人は渋い表情を崩さない。言い争いの末、店を出た。道すがら心中憤りつつも、冷たい風が身に染みてやり切れなかった。(築山英司)