2011年03月22日
近所の人から、日本の犬の血統書を翻訳してくれと頼まれた。最近もらってきた11歳の雌のシバイヌのものだった。血統書を見ると、日付は不明だが、いったん別の人物宛てに輸出されたようだ。今はサンフランシスコ郊外の民家に落ち着いている。
その犬は、新しい主人の英語の指示に従っている。日本語を忘れてしまったのだろうか。
あえて「お座り」とも「お手」とも声を掛けなかった。犬は話さないので数奇な運命をたどったかどうか知る由もないが、日本語を聞かせて里心を起こしたらと、変な心配をした。
血統書にある“本名”は「福女(ふくめ)号」だが、今の所有者はどこで覚えてきた日本語か、「すこし」という新しい名前で呼んでいる。
日本人の長期在住者には、米国人が覚えやすい英語の名前を通称として使う人が多い。この犬も新しい名前をもらって異国の地に骨をうずめるのかと思った。
(岡田幹夫)