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イスタンブール 欧州にもこびぬ自負

2011年04月29日

 一度も訪ねたことがなかったトルコのイスタンブールへ、取材や乗り継ぎで1週間に二度旅した。

 地下鉄がケーブルカーになっているほど、坂が多い。高齢化はこの国も例外ではないと聞くが、それを支えているのではないかと思えるほど地元の年配者の足取りは軽い。

 新市街のタクシム広場から南へ10分歩くと楽器店街があった。打楽器シンバル発祥の地だと教えてくれた店員の男性が「たたくほどよい音になる」。演奏技術のことかと思ったら、製造技術のこと。世界で最も有名な職人たちを輩出する技術を誇らしげに口にした。

 勤務地ベルリンは、西独時代の政策移民でトルコ人を大量に受け入れた。今もドイツ社会に溶け込んでいないと問題になっている。だが、イスタンブールの活気同様に、トルコ側の視点は外向きだ。欧州への統合が進まなくても、最近では中東の政変にも積極的に首を突っ込み、存在感を高めようとしている。

 欧州の東縁となるボスポラス海峡を臨むガラタ橋へ坂を下ると、200メートルほどの橋上に釣り人が鈴なりで驚いた。ボラ大漁の釣果を見せてくれた中年男性は「欧州統合? きっと、欧州の方がトルコの力を必要だと気づく」と話した。自信たっぷりの口ぶりがこの国の潜在力を示しているような気がした。 (弓削雅人)