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トブルク リビアの人 誇り高く

2011年04月27日

 エジプトとの国境から西へ車で約1時間。リビア内戦の取材で、地中海に面した港町トブルクに来た。この町でも先月の騒乱当初は最高指導者カダフィ大佐派の兵士らがデモ隊に発砲し多数の死傷者が出たが、数日後には軍と市民が一体となって大佐派を撃退。町は生まれ変わった。至る所で王政時代の古いリビア国旗が風に勢いよくはためいている。

 取材はまず、アラビア語の通訳探しから始めた。市中心部の広場で出会ったのが元英語教師のアルファルジャニさん(48)。偶然、半年前からビジネス通訳の仕事に転じていた。

 「通訳を頼みたい。報酬は払う」と切り出すと「金はいらない」と素っ気ない。翌日は彼の友人の運転で、町中を回った。再び支払いを申し出ると「日本人に今のリビアを知ってもらうために協力している。すべて革命のためだ」。誇り高さが渋い二枚目の顔に浮かんだ。

 何度も広場に通い、彼から大勢のリビア人を紹介してもらった。出会った人は皆、気さくで優しい。独裁に反旗を翻した広場は笑顔があふれ、顔見知りになった人は「マイ、フレンド」と手を上げてあいさつを送る。「われわれは平和的にデモをしていた。でも今は自由のために戦う」。彼らと接していると、1日も早い自由と平和の到来を願わずにはいられない。 (杉谷剛)