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北京 感性を疑う官製原稿

2011年05月16日

 東日本大震災を伝えるNHKニュースを見ていた中国人の友人が「日本の地震報道って“大人”ですね」とつぶやいた。

 いわく「アナウンサーは、冷静に、必要な情報を提供している」「被災者の人権にも配慮している」。インターネットを検索すると、こうした声が多く書き込まれている。

 中国メディアの報じ方は、日本とはかなり違う。国営中央テレビはニュースの冒頭、重々しいBGMとともに悲惨な映像を映画仕立てのように流す。犠牲者の写真を載せたネットメディアもある。

 中国で災害が起きれば、国家指導者が被災地で指揮を執る様子や、軍がけが人を救出する場面を強調するのも定番だ。今回、日本メディアの報道ぶりを知った市民からは「わが国の災害のニュースは指導者の宣伝ばかり。被災地で実際に何が起きているのか、真相が全く分からない」との批判も相次いでいる。

 中国の国際政治学者は、中国紙に「地震報道から見る日本メディアの品行」と題した論評を寄せた。四川大地震の際の中国メディアと比較し「犠牲者の映像は一切、出していない」「あおり立てるようなリポートをする記者もいない」などと評価し、こう締めくくっている。「ある国で大災害が起きたとしても、その国の公共メディアは、まともな役割を果たせない」 (朝田憲祐)