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ジェルバ 避難民はフリーパス?

2011年05月30日

 チュニジア東部のジェルバ空港で、珍しい光景を目の当たりにした。今やエックス線による手荷物検査は避けられないが、ここはまるでフリー。検査機がないわけではない。ただ、そこに座っていた「人」が違った。

 いつもは、荷物の中身に職員が目を凝らしているが、ジェルバでは検査機の前で、複数の男性が座ったままいすを回転させて遊んだり、モニターを興味深そうにのぞき込んだり。実は、彼らは内戦勃発で隣国リビアから逃れてきた東南アジアの出稼ぎの人々だった。奥の待合所を見ると、毛布を抱えた大勢の男性の姿が見えた。

 ジェルバ空港は国境から車で1時間半。母国への帰国のため、毎日数百人以上の人々が空港に運ばれてくる想定外の事態。その対応に空港の人手が取られ、検査に手が回らなくなったのだろう。避難民の荷物はチェックしないという人道的判断だったのかもしれない。いずれにしても、特別な状況だった。

 記者の航空券に記載された搭乗ゲートも避難民が座る検査機の向こうにあり、フリーパス。というか、出入り自由だった。うれしい半面「これでいいのか」とも思っていると、記者の航空機の搭乗ゲートについては変更したとの知らせ。もちろん、指定された別の手荷物検査場では、職員による入念な検査があった。(有賀信彦)