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チェルノブイリ フクシマの収束祈る

2011年06月03日

 ピーッ、ピーッ。警告音がうるさいほど鳴り続けていた。

 先日、取材に訪れたウクライナのチェルノブイリ原発。25年前に爆発事故を起こした4号機近くで、持参した放射線量計は最大で1時間当たり10.8マイクロシーベルトを示した。東京の通常値と比べると250倍を超える。

 すぐに健康に影響が出る値ではないが、短時間でも気持ちの良いものではない。福島第一原発の事故では半径20~30キロ圏内でも同様かそれ以上の数値が検出されている。住民の不安はいかばかりだろうか。

 「第2のチェルノブイリ」。福島の事故は世界でそう認識されつつある。

 チェルノブイリ事故では周辺の街がすべてゴーストタウンと化した。調査によってばらつきは大きいものの、事故の影響による死者は数十万人との説もある。

 同列に考えたくはないが、取材で一緒になった仏紙リベラシオンの女性記者は「福島の事故は今も収束していない。最終的に被害がチェルノブイリより小規模で済むとは限らない」と語った。

 「日本はチェルノブイリ級になる前に被害拡大をストップできるのか」。その記者に詰め寄られた。

 「できる」

 根拠はないが、日本人の1人として半ば祈るような気持ちでそう答えた。(酒井和人)