2011年06月05日
経済や文化の発信地として派手なイメージのニューヨークだが、夜のマンハッタンは意外なほどに暗い。繁華街のタイムズスクエアなどを除けば、街灯やネオンは必要最小限。レストランは薄暗く、メニューの細かい文字が読みづらいほどだ。
そこで、ニューヨーク市の統計を調べると、2008~09年の市民1人当たりの電力消費量は「6.0」メガワットアワー。全米の大都市ではサンフランシスコに次ぐ低さで、同じ統計にある東京の「6.4」を下回っている。
その東京を含む日本は今、「節電」が国民的な課題だ。出張で米国を訪れた大企業の幹部は、自宅の温水洗浄便座のヒーターを止めたという。いわく、「あって当たり前になっていたけれど、考えてみればちょっと前までヒーターなんてなかったもん」。
いわれてみれば米国では、水がシュッと出るトイレにも自動でお湯がたまるバスタブにも、まだお目にかかったことがない。慣れきった身からするとやや不便だが、なければないでその生活に自然と慣れてしまうものだ。
過去に大停電を経験したニューヨークでは、電灯もテレビもパソコンもない夜の闇が、家族との触れ合いを深めたとの報告もある。逆境を前向きにとらえるおおらかさは、今の日本人にもきっと共通する。(青柳知敏)