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北京 小皇帝よりママ怖い

2011年06月13日

 「誰がこんな髪形にしてと言ったのよ!」

 北京の下町の理髪店で散髪してもらっていると、店内の斜め後ろから女性の怒鳴り声が聞こえてきた。

 鏡を通してのぞくと、そこにはサングラスをかけた派手な格好の女性が、両腰に手を当てて“仁王立ち”。隣の散髪用のいすには、この女性の息子とおぼしき高校生ぐらいの男性が、こぎれいに刈られた頭をなでながら目に涙をためていた。

 中国では、改革開放後の経済成長とともに育った1980~90年代生まれの世代は「80後」「90後」と呼ばれる。1人っ子政策により、家では「小皇帝」。親は小遣いを惜しみなく与え、子どもは物に不自由せずに育っているとされる。とはいえ、高校生ほどの年になって髪を切るにも母親同伴とは…。

 結局、店の責任者らしき人が、その子の髪形を手直しすることで決着したようだ。5分ほどして、「不満だけど、仕方ないわね」とくだんの女性の声が聞こえてきた。

 料金は15元(約200円)。母親はカウンターで100元札を投げつけ、おつりを受け取るや「二度と来ないからね」と吐き捨て、店を出ていった。

 そうこうしているうちに、当方の散髪も完了。鏡を見ると、さっきの子どもとほとんど同じ髪形。中国定番の角刈り「平頭」風になっていた。(朝田憲祐)