2011年06月09日
台湾中部の南投県埔里(ほり)の桃米生態村に「紙の教会」がある。阪神大震災で燃えた神戸の鷹取教会の聖堂跡に日本の建築家、坂茂さんが集会所として建てた「ペーパードーム」で、ドームの解体を聞いて桃米が譲り受けた。
埔里は阪神の4年後に起きた台湾中部大地震の震源に近く大被害を受けた。地震が取り持つ縁で2008年に移築され、観光施設として開放されている。
その紙の教会の中央に東日本大震災後の3月下旬、人間の子どもほどの大きさのカエルの彫像が設置された。日本留学経験もある地元の彫刻家、張家銘さんの制作で、両手を胸の前で合わせて、薄く目をつむって祈るように直立している。
桃米はカエルの繁殖地として知られ、紙の教会の池でもイヌの声に似た鳴き声のカエルがいる。カエルの里にふさわしい彫像だが、実はもう1つ大きな意味があるという。
日本語の「カエル」は「帰る」と同じ発音で、中国語の「回家」(家に帰る)の意味。東日本大震災で多くの人が家を失った。カエルの彫像には、その人たちが少しでも早く家に帰れるように、という願いが込められている-と施設のガイドが教会に集まった数十人の台湾人観光客を前に説明していた。紙の教会は台湾と神戸だけでなく、東北ともつながった。(迫田勝敏)