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都江堰 あの震災もう風化?

2011年06月19日

 中国・四川大地震の発生から丸3年を控えた4月下旬の夜。校舎の倒壊で多くの子どもが亡くなった四川省・都江堰(とこうえん)市の街を歩いていると、カラオケの熱唱がこだましてきた。

 そこは高級ホテルの屋外ステージ。人だかりをかきわけると看板に「全国17都市友好警察署研修会」と。その打ち上げらしい。

 ぱっと見、数百人はいる。テーブルに置かれたパンフレットに「かがり火パーティー」とある通り、ステージ前には、かがり火が2つ。何とも豪勢な。

 ほろ酔いも手伝ってか、5メートル四方はあろうかという大画面を見ながらマイクを握る地元署の副署長は、ご満悦。その後ろでは四川省の少数民族、チャン族の民族衣装を着た女性らが踊っていた。

 さらには、ステージ正面の特等席。警察幹部とみられる男性の隣に、民族衣装姿の女性が1人ずつつき、ワインを酌していた。

 パーティーは花火の連発で締めくくられた。「スケールが違う」と感心しそうになったが予算はどこから出ているのだろうか。

 公安当局は、校舎倒壊で子を失った親らが手抜き工事を訴えないよう、行動監視や電話盗聴などで圧力をかけ続ける。「心の傷が癒えることはない」と節目を前に悲しみを新たにするある親に、その晩の騒ぎぶりは、とても伝えられなかった。 (朝田憲祐)