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モスクワ 雨のち晴れとなるか

2011年06月20日

 薄曇りの空からポツリと雨粒がほおに当たった。しかし、周囲は騒ぎになっていない。ひょっとして鳥のフンか何かだったのか…。

 第二次世界大戦でロシアの対独戦勝記念日に当たる5月9日、モスクワ中心部の「赤の広場」で軍事パレードの開始を待っていた。

 モスクワでこの日は雨が降らない日と決まっている。市内に雨雲が近づけば軍の飛行機が薬剤をまいて“撃退”し、無理やりでも晴天を作り出すからだ。

 雨なら大事件だったのだが結局、開始直前には薄雲も消え、パレードは何事もなく実施された。“雨雲攻撃隊”が出動したかどうかは不明だが、今年も晴天の伝統は守られた。

 最新兵器が次々と登場し、2万人が行進したパレードはなかなか壮観だった。が、観覧席は軍や政府関係者ばかりで、一般市民は赤の広場はもちろん、市中心部への立ち入りも制限されている。

 終了後、広場近くのホットドッグ店で、軍人しかいない列に並びながら、だれのためのパレードかと少々、疑問も浮かんだ。

 ソ連崩壊後、経済近代化が遅々として進まない一方、軍備の刷新には多額の予算を惜しまないロシア。そろそろ、実態にそぐわない大国意識を洗い流す“大雨”が必要ではないか。そんなふうに思いながら見上げた空は抜けるように真っ青だった。 (酒井和人)