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北京 あの故宮が謝った!

2011年06月26日

 中国人は謝罪が苦手だとかねがね思っている。日常会話で「対不起(ドイプチー)」(ごめんなさい)と言う人はまれ。代わりに使うのが「不好意思(ブーハオイース)」で「悪いね」という軽い意味だ。

 まして政治家や官僚、企業のトップらが公の場で謝罪するのは皆無に等しい。だから中国の庶民は、東京電力の社長が被災者に土下座する姿に驚く。

 先日、北京の故宮博物院に泥棒が入り、警察が3日後に容疑者を逮捕。故宮は警察をたたえる記念の旗を贈ったが、旗に書かれた言葉に誤字があり、反対に警察をこき下ろす意味になることが指摘された。

 しかし故宮はなかなか非を認めない。ネット、新聞、雑誌などで、その意固地な姿勢が批判の的となり、とうとう謝罪文を出す羽目になった。

 かつて皇帝が暮らした故宮は天安門広場や、要人の住む中南海に接し、権力の象徴の一つ。文面はブログに出され、言い訳ばかり書かれていた。それでも故宮が庶民の声やマスコミに屈し、謝罪したことは驚きだった。

 中国人の同僚たちの会話に耳を澄ますと、「不好意思」に交じり、「対不起」が以前より増えた気はする。誰もが素直に「対不起」と言えるようになれば、この国はもう少し暮らしやすくなるかもしれない。 (渡部圭)