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新竹 花開いた客家の苦闘

2011年06月25日

 台湾で「五月雪」と呼ばれる花がある。日本ではあまり見ない油桐(あぶらぎり)の花だ。ウメの花に似て、ウメよりひと回り大きい白い五弁の花びらを付ける。5月に開花し、舞い落ちる。まさに雪のようだ。

 その五月雪を見る「客家(ハッカ)桐花祭」を政府の客家委員会が主催し、台湾13県市45町村(郷鎮)で実施中。その一つ、新竹県峨眉郷に行った。山間に入ると、あちこちの樹木の上に白い花が一塊になって咲いている。積雪のようにも見える。

 ところでなぜ客家委が桐花祭を独占的に開くのか。案内の副主任委員が話してくれた。

 客家は古い風俗習慣を保持する漢族の一種。福建省南部からの一般の台湾人(ホーロー人)より遅く移住した。客家が来た時、平地はほとんどホーロー人が占め、客家は先住民と戦いながら、山間部に集落を築いた。

 しかし山間の暮らしは厳しい。日本統治時代、総督府はその山間に油桐を植え、油を取ることを奨励した。戦後、油はほかの油に市場を奪われ、油桐はむなしく花を咲かせていた。その花と登山ブームを結び付けて客家の「村おこし」を狙ったのが桐花祭…。

 客家料理を食べながら副主任の話を聞いていると、窓辺にスーッと油桐花が落ちた。自然の花にもその土地の苦闘の歴史が秘められている。 (迫田勝敏)