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紹興 原料高騰ネを上げる

2011年06月27日

 「10年間寝かせて開封する時、いったい、いくらで販売することになるのやら」。日本でもなじみの深い紹興酒の本場、中国・紹興市で、昔ながらの手作りを続けている造り酒屋の経営者は、23リットル入る瓶を見つめてつぶやいた。

 原料のもち米は、急速に進むインフレで高騰している。経営者によると、10年前、もち米の仕入れ値は1キロ2元(約26円)ほどだった。それが、「今では、5倍近くにまで値上がりしてしまった」という。

 多くの業者は、発酵技術を機械に頼り、大量生産している。だが、同市にある約130業者のうち1割ほどは、今も職人に頼り、発酵に適した冬だけに限られた量を醸造している。

 職人の腕が味の決め手だけに、人件費を削るわけにもいかず、経営者は何度か値上げに踏み切った。「機械を導入して人件費を浮かせようかとも思ったけれど、やはり、味の深みが違うので」ともこぼした。

 水分が蒸発するため、10年物は、開封時に1割ほど量が減っているという。30年物、50年物ならば、半分近く減ることもあるのだとか。「中身が増えてくれれば、原料が値上がりしても大丈夫なんだけど」。瓶をさすりながら冗談を語った経営者の目は、笑ってはいなかった。 (今村太郎)