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ロサンゼルス 砂漠の悲劇願い新た

2011年07月05日

 相変わらずの砂嵐。ロサンゼルスから車で4時間半の元マンザナー日系人収容所。今年は4回目。過去二十数年間、通い続けてきた。

 1941年、日本軍の真珠湾攻撃で1万人以上の日本人・日系米人が敵性外国人として強制収容された。3分の2が米国生まれの米国籍だったが人権が無視され自由を奪われた。携行を許されたのはスーツケース1つだけ。事情を知り群がる人々に家財を捨て値で売るしかなかった。

 80~90歳で存命の元収容者多数に話を聞いてきた。マンザナーという「リンゴ園」を意味する砂漠の真ん中の収容所生活で皆が思い出すのは砂嵐だ。宿舎の壁の隙間からどれだけ細かい砂が毎日吹き込んできたか口をそろえて語った。

 ことしも例年通り当時をしのぶ慰霊祭が行われた。全米各地から1000人以上が大型バスなどで集合した。日本の総領事も夫人同伴で参加し、演説をした。

 全米10カ所に上る収容所があったことが、日本はもちろん米国でも忘れられつつある。だがいつものようにイベントの中で和太鼓をたたく若い学生の目は光っていた。

 人権を無視され砂漠の地で亡くなった人をしのぶ石碑の近くで、多数の人々が二度とこのような悲劇が起きないよう、また気持ちを新たにした。(野口修司)