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ウッドーミアンチェイ 軍備よりも暮らしに

2011年07月06日

 4月に国境地帯で起きたタイ・カンボジア両軍の衝突を取材するため、カンボジア北部ウッドーミアンチェイ州を訪ねた。隣のシエムレアプ州中心部から車で約2時間。農村地帯を走る唯一の国道は、途中からひどいでこぼこ道になった。

 大型の四輪駆動車を運転したのは地元の国会議員シアン・ナムさん。避難してきた大勢の住民を見舞うため、自らハンドルを握った行動派だ。車体は路面を飛ぶように激しく揺れ、砂ぼこりで前が見えないこともあった。

 道沿いには家や商店が点在し、子供たちは長い道のりを学校に通う。「この国はもっと道路が必要だ。道ができると、人や物の移動が盛んになり、人々の暮らしは安全で豊かになる」とナムさん。でこぼこ道でも文字通り住民の生命線だ。

 ナムさんに案内された軍施設で、ニアン・パット軍司令官に会った。「われわれ小さな国は(タイのような)大きな国と戦争はしたくない。予算は本来、開発に使いたい」。軍人であっても、装備増強より開発予算を望んでいることに、切実な事情がうかがえた。

 カンボジアは長い内戦の影響で、道路や水道、学校、病院などの整備が大きく遅れている。子供たちにカメラを向けると、興味津々にこちらを見る目が輝いていた。争いの終わりと国の発展を心から願った。(杉谷剛)