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カイロ 流行…でもバラバラ

2011年07月28日

 カイロ市内のベルギー大使館前を取材で通りかかった時、30歳前後の男性がたった一人でハンドマイクを手に、大使館に向かってアラビア語で何かをまくしたて始めた。

 「何か始まるのか」と思い、ちょっと身構えて様子を見ていたが、騒ぎになる様子はない。同行していたエジプト人助手に聞くと、男性は同大使館の職員らしく、雇用条件や待遇に不満があって抗議しているという。

 一人だけの抗議デモというわけだ。助手いわく「エジプトの若者にとって、デモはファッション(流行)だからね」。

 大規模デモの呼び掛けのない金曜日に、ムバラク政権を崩壊に追い込んだデモの本拠地、タハリール広場に行って目にしたのは意外な光景だった。

 てっきり一つの大集団でデモをしていると思い込んでいたが、実際は数十人から数百人の参加者がいくつかの集団で別々に抗議をしていた。

 あるグループはデモの死傷者に対する政府の責任を追及し、あるグループは暫定統治する軍最高評議会議長の辞任を求め、あるグループは賃上げや生活改善を訴えていた。

 「要求はさまざま。一つにまとまってはいない。政権を倒したのはいいが、本当に大変なのはこれから」という大学生の冷静な言葉が印象的だった。 (古田秀陽)