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延安 日本人像の代役求む

2011年07月30日

 中国共産党の成立90年を迎え、「革命聖地」である陝西省延安は大勢の観光客でにぎわう。延安は共産党が国民党勢力から逃れるため江西省から始めた長征の終着地で1936年から13年間にわたり拠点を置いた。

 かつて日本の某政治家が「今も穴を掘って住む人がいる」と発言し、物議を醸した横穴式住居の窯洞(ヤオドン)があり毛沢東や周恩来が暮らしたアーチ形の窯洞の跡が残る。

 がけ地を歩き回ったせいか疲れてしまい、夜は足裏マッサージに行った。若いマッサージ師は隣の山西省からの出稼ぎ。私が日本人だと名乗ると「信じられない」と驚く。そして「初めて日本人に会った。もっと怖いと思っていた」。

 話を続けるうちに、やはり“犯人”は戦争映画と判明。共産党の宣伝に使われ、中国人をいじめる悪役日本兵が登場する昔の映画がテレビで放映され、子どもたちに固定観念を植え付けるのだ。

 翌日は太鼓をたたきながら踊る腰鼓という伝統芸能を見た。かわいらしい小学生の演奏に和んでいると、教師が「このおじさんは日本から来ました」と紹介してくれた。別れ際には一緒に記念写真を撮り、握手攻め。

 子どもたちよ。もし今後映画を見ても「あのおじさん、実は悪い人だったのか」と思わないでほしい。 (渡部圭)