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アスコット ムチ使い無知はダメ

2011年07月31日

 英西部バークシャー州のアスコット競馬場へ向かった。英王室が開く今年300周年の競馬レースがある。

 オードリー・ヘプバーン主演の映画「マイ・フェア・レディ」にも登場した競馬場は、おとぎ話さながらに女性たちの華麗な帽子姿が目を引いた。着飾った奥さまが馬券を慣れた手つきで買っている。一瞬不思議な光景だ。ほかでは見られない独特な服装は、島国の英国がガラパゴス化して独自に社交界を進化させた結果だろうか。

 もう1つお国柄を感じさせるのが馬の愛護意識の高さ。競馬場外で、馬の福祉団体や競馬場側が「ムチを使う回数をもっと減らしてほしいか」とファンにアンケートしている。

 英競馬界はムチの使用に厳格だ。過去には英国遠征した武豊騎手らが必要以上に打ったとして騎乗停止の処分を受けたことがある。英国でも騎手側は「打つ回数を減らすと作戦が組み立てられない」と反発するが、世論は愛護が優勢のようだ。

 レースはエリザベス女王が見守る中で始まった。ゴール近くで待ち構えると、目の先10メートルの芝を何頭もの馬が一気に駆け抜けた。壮観だ。素人目には速すぎてムチが見えなかった。馬の痛みを想像する間もない。無類の馬好き、競馬好きで知られる女王にはどう見えただろうか。妥当なムチの使い方をぜひ聞いてみたい。(松井学)