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カイロ 先行“革命ビジネス”

2011年08月23日

 エジプトの民衆革命の聖地、カイロのタハリール広場。今も毎週のようにあるデモのたびに屋台が並び、まるでお祭りのようだ。

 デモの参加者に、ジュースや果物、焼きトウモロコシ店が人気なのは分かるが、なぜかメガネや靴をずらりとそろえた露店まで。

 パラソルの下で、帽子や国旗を売っていた青年は、大仰な「大統領事務所」の看板を掲げていた。よく読むと、「我が輩は、国家と人民に奉仕する大統領である。何か不満があれば訪ねてくれ。ただし、先にカネを払うべし」と書いてある。

 国の事業で便宜を図った見返りに、実業家から別荘を受け取ったとして起訴された、ムバラク前大統領をやゆしている。ユーモアと皮肉にクスリとさせられ、国旗のバッジを1つ買ってしまった。

 デモ参加者の腕や顔に、国旗などを描いて回るペインティング商売も多い。アハマドさん(21)も、その1人。

 赤、白、黒の絵の具で腕に国旗をペイントしてもらい1ポンド(約13円)。1月から商売を続け、多い日は数十人の客があるという。「神のおかげ。就職先が見つかるまで続けるよ」と明るかった。

 改革の遅さに、民衆は暫定政府に対する追及の手を緩めていない。その現場で繁盛する、“革命ビジネス”にもまた、エジプト人のたくましさを感じた。 (今村実)