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ロンドン 思い立ったら卒業式

2011年08月22日

 大学を出てから数年になるロンドン支局の助手が、今になって卒業式に出席した。その大学では「卒業」それ自体とは別に、式出席の権利を「いつ」行使するか選べるという。

 卒業直後に「式なんて退屈なだけ」と出る気にならなくても、年を重ねるうちに、「心を新たにしたい」と、式に足を運ぶということもできるわけだ。

 助手の場合は、「娘の卒業式の写真を撮りたい」との両親のたっての願いからだった。それでも学生時代には意地悪にしか見えなかったある教授の意外な優しさを垣間見る機会があり、「出席してよかった」という。

 なかなか気の利いた権利だと思い、大学の規則に記載されていないか、助手に調べてもらったが、その記述はない。慣習として、長年定着しているもののようだ。

 卒業式後、助手は黒い帽子にマント姿で、例の記念写真を撮ったが、その帽子にも興味深い話がある。入学時に帽子は学生に与えられるが「決してかぶってはいけない」と教えられるという。卒業式でも、だめだそうだ。かぶるのは、学生でなくなった卒業後の写真撮影の時ということになる。

 実はこの決まりも、規則ではなく古くからの習わし。そのため、「着帽禁止」の理由もやはり分からないという。

  (有賀信彦)