2011年08月25日
ミャンマー難民キャンプの取材で、タイ北西部の国境の町メソトを訪れた。ここは来るたび発見があって面白いが、バンコクから400キロも離れた山あいの町で、まさか何百台もの日本車に出くわすとは思わなかった。
国境を流れるモエイ川の橋をミャンマー側が突然閉鎖したのは、ちょうど1年前。国境貿易で通行料を稼いでいた対立する少数民族の収入を断つ狙いとされた。それまではミャンマーから魚や薬草、タイから電化製品や食用油などが持ち込まれ、朝夕はミャンマーの出稼ぎ労働者でにぎわっていた。
橋は依然閉じたままで、一帯は閑散としていたが、不思議にも道路脇に大型トラックが何台か止まっている。地元ガイドのスワさんに聞くと、「コンテナの中はミャンマーに行く日本車だ」。さっそく“港”に向かった。
川沿いの雑木林を抜けると、目に飛び込んできたのは、広い空き地にびっしりと並んだ日本の中古車だった。「あの小さな船着き場から、3、4台ずつ運ぶんだ」とスワさん。橋が通れなくても貿易は健在だった。日に焼けた人々の顔にたくましさがにじんでいた。
対岸に渡り、日本車の行方を追いたい衝動に駆られたが、ミャンマー政府は昨年来、外国人記者の入国を拒否している。それだけにまたこの辺境の町に来たくなる。(杉谷剛)