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カイロ 「革命の実」最安値は

2011年09月05日

 「自由」が10ポンド(約130円)で「怒りの金曜日」は20ポンド。そして最高級は「タハリール広場」と「殉教者」で25ポンド。さて、この商品は-。

 いずれも乾燥させたナツメヤシの実のキロ単価だ。客であふれるカイロ下町の店をのぞくと、品質に応じ、どれも民衆革命にちなんだ名前が付いていた。

 大人の親指ほどの実は、ほんのり甘い。1日から始まったイスラム教徒のラマダン(断食月)中の必需品。慣習で、日中に食事を断った人々が、日没後に初めて口にする食べ物がこの実だからだ。

 毎年、ラマダン前に業者が競って品質ごとにユニークな名前を付け、関心を呼ぶのが風物詩。例年は人気サッカー選手や芸能人の名が多いが、今年は「革命もの」が流行だ。

 ちなみに中東メディアによると、ある店が最低ランクの実に付けた名前は「ムバラク(前大統領)」。キロ当たり3ポンドという。

 ラマダン中、親が子に贈ることが多い玩具の灯ろうまで、影響が表れていた。灯ろう店の女性店員は「キャラクターものを抑え、一番人気は戦車型よ」。前大統領に引導を渡し、国民を守った軍を象徴するかららしい。

 半年前までの最高権力者も、今や庶民の評価はがた落ちだ。「ムバラク」の実は、苦々しい時代を思い起こさせる味なのだろうか。(今村実)