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北京 マナーなお不協和音

2011年09月11日

 北京にある最新のクラシック音楽専用ホール、国家大劇院に久しぶりに出掛けた。

 入り口では、前回訪れた際にはなかった安全検査があった。手荷物を機械にくぐらせると、「カメラはダメです」と検査員にクロークを指さされた。

 マナーに欠ける聴衆対策か。中国では「演奏中の撮影は禁止」と注意しても、カメラのフラッシュがあちこちでたかれるからだ。

 ホールで携帯電話の電源を切ろうとするとアンテナが立っていなかった。これまで演奏中の携帯電話には閉口させられてきた。ホール側も写真撮影と同様、言っても聞かないから、強制的に電波を遮断しているらしい。

 さて、メーンはマーラーの第4交響曲。1時間足らずと比較的短いのだが、耳慣れないのか、客席の後方から「うぁーあっ」という大あくび。一人っ子政策で甘やかされて育った中学生ぐらいの「小皇帝」は、隣の母親にもたれかかり、「ママー」。カメラ機能付きの携帯電話を取り出し、指揮者に向ける者もあちこちに現れ、国家大劇院の“名物”ともなっている注意喚起の赤いレーザー光線を当てられても、動じることなく、パシャ-。

 「面目ありません」とホール担当の知人。以前、聴衆に向かって首を横に振った著名な女性オペラ歌手の悲しげな表情が思い出された。(朝田憲祐)