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ニューヨーク 自由選択味わいたい

2011年09月09日

 自宅近くの24時間営業のデリで、店員に「#34(サーティーフォー)」と呼ばれている。ローストビーフを薄く切って、焼いたバゲットにチーズと一緒に挟む、あれ。お気に入りのサンドイッチのメニューの番号が「#34」なのだ。

 毎度決まってそれを注文していたら、いつの間にか自動化した。夜中、店に入るやいなや、店員が「待ってました」とローストビーフを切り始める。たまには違うサンドイッチを…と意を決しても、あの笑顔に釣られてしまい、今日も「#34」を買ってきた。

 実はこれ、ニューヨークでは最高級のサービスらしい。常連客の顔だけでなく、注文するメニューも覚え込む。ちょっと気取ったバーやレストランはぶっきらぼうで愛想がないが、店員に中南米系の移民が多いデリは、庶民派ながら3つ星級のもてなしだ。

 それでもついに浮気心が芽生え、別のデリでもサンドイッチを買い始めた。今度は毎回メニューを変え、その日の気分で好きなものを選んでいるが、飲み物や缶詰やスナック菓子を抱えてレジに着くと、カウンターにマールボロがしっかり用意されている。

 「#34の次はこれか」と思ったが、そこは最上級のサービス。たばこをやめようと思っても、つい買ってしまう…というのは言い訳か。(青柳知敏)