2011年09月20日
知らない町を探索するときは、まず市場に行くことにしている。所狭しと並べられた食料や商品は初めて目にする物が多く、何より町の活気や人々の暮らしぶりを肌で感じられるのがいい。
長いカンボジア内戦で激戦地となった北西部のバタンバン。フランス植民地時代の建物が今なお残る町の中心部にあるのが、プサナ市場だ。最初に目を引いたのがトンレサップ湖で捕れる種類豊富な淡水魚と、色鮮やかな果物と野菜の数々。独特のにおいをまき散らしていたドリアンは今が食べごろで旬を祝うような人だかり。
奥の通路は人一人がやっと通れるほど。食器、工芸品、線香、おもちゃと、あらゆるものが積み上げられ、通路を覆うように上からもぶら下がる。奥は薄暗く、掘り出し物を探しながら“探検”している気分になる。
何百着もの色とりどりのドレスを売る華やかな一角に出た。女性たちが生地を裁断しミシンで縫い上げ、小さなビーズを1つずつ丹念につけていた。華やかな衣装に引かれてカメラを向けると、ほほ笑みが返ってきた。
買い物しながら働く人々の写真を撮るのが“市場探検”の楽しさだ。レンズ越しの一瞬のつながりがうれしくもある。毎日を懸命に生きる人の表情は国が違っても同じ。生き生きとした強さがある。 (杉谷剛)