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大慶 「口コミ」千里を走る

2011年09月28日

 北朝鮮の金(キム)正日(ジョンイル)総書記は、ここ1年数カ月で4度目の訪中。最近では、中国での「将軍」の知名度は格段にアップした。

 ロシア訪問を終えた金総書記が、黒竜江省の地方都市、大慶に姿を現す情報は街中に広がっていた。総書記の訪中は元来、中朝間で訪問が終わるまで発表しない、との慣例があり、訪中は“隠密行動”とされていたにもかかわらずだ。

 視察予定の都市計画展示館近くの路上では、道路掃除のおばちゃんまでが「金正日が来るんだよ」と教えてくれた。主要道路が規制され「大慶始まって以来の交通渋滞」の中でも、市民は仕方ない、と冷静だった。

 一方で、金総書記を接待する中国要人は習近平国家副主席だ、とのうわさも。警備の警察官に聞くと「習近平」と断言。揚げ句の果てには、同じ黒竜江省のチチハルで、総書記が視察した工作機械メーカーで「習近平が現れた」と、ミニブログでつぶやく工場関係者まで現れた。

 しかし、ふたを開けてみると、会談したのは戴秉国国務委員。小柄な戴氏と大柄で太り気味の習氏、どうみても間違えるはずもない。もうすぐ、国家主席になるだろう人なのに…。警察官までうわさを信じ込んでしまう中国人の“口コミ拡散現象”は恐ろしいなあ、とつくづく思った。(安藤淳)