2011年09月23日
なぜ、「紳士の国」といわれる英国で、あんな暴動が起きたのかと、日本では首をひねったそうだが、違う意味で「これが紳士の国か」と思うことはある。
例えば手を洗った後のこと。ロンドンに赴任して1年5カ月が過ぎたが、1度もハンカチで手を拭いている人を見たことがない。女性もである。
パブでポテトをつまんで油まみれになった手をどうするのかと、観察しているとズボンで拭う。さりげなく行うところに“犯意”がみてとれる。トイレに備え付けのエアタオルを使う人はたくさんいるから、本当は服をハンカチ代わりに使いたくないと思っていることは明白だ。
雨が降ることの多い日は、別の「紳士にあるまじき行為」に出合う。だれも電車に乗る前に傘の水滴を落とそうとしない。満員電車にでも乗ろうものなら、もう足はずぶぬれだ。でも、そんなことは隣に立っている傘の主はどこ吹く風だ。
と、悪口ばかり書いたが、それを吹き飛ばすいい話もある。街角や電車の中で、ふと女性と目が合ってしまう経験は誰でもあるだろう。なんとなく互いに気まずい一瞬だが、そんな時、彼女たちは、優しくほほ笑みを返してくれる。そういう習慣なのだろうが、「淑女の国」の心遣いに、ちょっとうれしくなる。(有賀信彦)