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ロンドン 操作誤り危急温暖化

2011年10月10日

 ロンドンに赴任した9月初旬。家族でヒースロー空港に降り立ち、タクシーに乗り込んだ。ほどなくして、運転手が快晴の秋空を指さして笑みを向けた。「君らは運がいい。でも、ロンドンの天気は誰にも分からない」

 承知はしていた。ころころ変わる天気はもちろん、寒暖の差も大きい。空港に到着した午後は気温25度で、汗ばむほどの陽気。一転、その晩は10度近くまで落ちた。ここまでは予想の範囲内だったが、新居で思わぬ熱帯夜に見舞われた。

 子ども部屋をのぞくと、2人の息子と娘がベッドで汗だくになっている。さながらサウナ。なぜだ。タクシー運転手が口にした言葉が頭をよぎった。誰にも分からないのは、天気の話ではなかったか。日本の真夏を思わせる蒸し暑さに、妻は眠れぬ夜を過ごした。

 原因が判明したのは、大家に問い合わせた翌日。英国ならではの暖房設備が災いした。住居にはセントラルヒーティングが完備されており、各部屋にあるパネルヒーターが熱を放射。加えて、分厚い扉とガラス窓が温室効果を高めている。

 賃貸契約時に簡単な説明を受けていたが、どうやら温度を一定に保つ制御装置の操作を誤っていたらしい。冬用の設定にしていたため、ただでさえ気密性の高い室内が魔法瓶のようになっていた。

  (小杉敏之)