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台北 反日でない抗日映画

2011年10月09日

 日本統治時代の昭和5年、台湾中部で起きた原住民(先住民族)の抗日暴動を日本軍が鎮圧した霧社事件を映画化した「賽徳克・巴莱(セデック・バレ)」の公開が始まった。「海角7号」で大ヒットした気鋭の魏徳聖監督の話題ずくめの最新作。その話題の一つが事件のあった霧社の街や小学校をそっくり復元しセットにしてロケしたことで、これも台湾映画では初とか。

 その復元されたセットの霧社を見た。街は桃園県林口の丘の上、100メートル余りの土の通りの両側に雑貨店、酒店、旅館など木造の日本家屋が並び、どこか懐かしい感じがする。小山を越えると公学校(小学校)があり映画では運動会でにぎわうここを原住民が襲い、女性や子どもを含む日本人100人以上を次々と殺害する。撮影所は今後、昭和の街、霧社をテーマパークにしたいという。

 映画の話題はまだある。事件が事件だけに全編山野を舞台に戦闘シーン連続の大スペクタクルで、迫力満点。しかも上下合計5時間という超大作。上映3日間で興行収入は1億元(約2億6000万円)を超え、台湾映画としては史上最高を記録した。抗日事件だけに日本人としては気になる物語だが、原住民が自分たちの文化を守る戦いだったことが強調され「反日」は主題になっていない。 (迫田勝敏)