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済南 海越え心のアシスト

2011年10月19日

 雨に打たれながら、「なでしこジャパン」のサポーター、角田寛和さんは「東北に笑顔 日本に勝利」の幕を高く掲げていた。中国山東省済南市で開かれたサッカー女子のロンドン五輪アジア最終予選。その日は東日本大震災の発生から半年の節目だった。

 角田さんは震災後11回、宮城県気仙沼市などにボランティアとして入った。行政の支援が被災者に行き届かないもどかしさ。避難所で要望を聞くや、すぐに行動に移した。

 まずは、自ら経営する店の靴800足を配った。さらにはツイッターでカンパを呼び掛け、洗濯機や乾燥機、扇風機…。「アイスクリームが食べたい」と言われれば、保冷車を工面して届けた。

 スポーツでも“支援”した。今春の高校野球選抜大会。被災者から「東北高の応援に行く余裕がない」と聞かされると、甲子園のアルプス席に駆けつけ「がんばれ東北」と掲げた。映像はテレビで避難所に届き「ありがとう」と感謝された。

 震災から半年。なでしこ応援席からのエールは、選抜大会の延長線。「海を隔てた中国からの映像で『東北』の文字が流れれば、励みになるかと」。ボランティアの時と同じ、手製のちょんまげに日本代表の青を基調にしたよろい姿。ぱっと見、おちゃらけ。でも、口は真一文字に結ばれていた。 (朝田憲祐)