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パイリン 悪魔の兵器に罪思う

2011年10月23日

 カンボジア北部国境の町パイリンで、初めて地雷を見た。取材で訪ねた農家の男性チャン・チューンさん(26)が前日にトウモロコシ畑で見つけ、家に持ち帰ったものだ。

 今年1月に農作業中に地雷に接触、右足のひざから下を失い、一時失意のどん底だったチャンさん。地雷を触るのが怖くなかったか聞くと、「子供たちが踏んだら大変だ。今までに何百個と拾ってきたから大丈夫」。気丈な答えが返ってきた。

 現地を案内してくれた地雷除去団体の明博史さん(41)は、泥のついた丸いプラスチック製の兵器の正体を即座に見破った。「中国製の対人地雷72型で、金属は起爆用の小さな撃針だけ。探知機に引っ掛からないように金属を極力減らしている」

 地雷は誰かが踏むまで半永久的にじっと待ち続け、無差別に人を殺傷する。「だから悪魔の兵器と呼ばれる」と明さん。本体が斜めに傾くと、中のセンサーが反応して爆発するタイプもある。これだと足で踏まなくても、取り除こうと動かした瞬間にドカン。何という執拗(しつよう)さだろう。

 チャンさんが見つけた地雷は直径7.8センチ、重さはたった140グラム。この小さなおもちゃのような容器にも、際限なく殺人兵器を生み出してきた人類の残酷な知恵が詰まっている。戦争をする人間の罪深さをあらためて感じる。 (杉谷剛)