2011年10月24日
一気に眠気が吹っ飛んだ。地下鉄でロンドン市内を移動中、大音量のメロディーが、いきなり耳に飛び込んできた。乗り合わせた他の乗客もびっくり。車内を見れば、隣の出入り口付近で3人の中年男性が、ギターとバイオリンによる生演奏を始めたではないか。
一つ手前の駅から乗り込んできたらしい。「みんな、一緒に踊ろうぜ」。リーダー格の呼び掛けと軽快なリズムに合わせ、体を揺する乗客もいた。3人組は下車するまでの2駅分で2曲を演奏。車内は拍手に包まれた。
駅構内でよく見かける「ストリートミュージシャン」は、ここでも珍しくない。彼らは当局に場所や時間を指定される上、オーディションまであるが、車内での演奏はご法度。ただ、それをとがめる雰囲気はなかった。
地下鉄に乗っていて感心することがある。ロンドンに赴任して1カ月、寝ている乗客を見たことがない。「防犯」が最大の理由だが支局の女性助手は「他人に寝顔を見せるなど、あってはならない」。残業が日常の日本のビジネスマンらと違い、寝不足の人が少ないとの説も。
いずれにせよ、車内睡眠の習慣が抜けない記者にとって、毎日30分弱の通勤は眠気との闘い。そんな折からのミニライブ。子守歌でない限り、いつでも歓迎だ。
(小杉敏之)