【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. ヨーロッパ
  5. モスクワ 専用ではなく不用レーン

モスクワ 専用ではなく不用レーン

2011年11月01日

 モスクワの車はよく飛ばす。片側2、3車線くらいの通りだと、信号機のない横断歩道もあって、おっかない。都心の通りをクレムリンに向かって歩いていたら、脇の電柱上に大きな監視カメラを見つけた。速度違反監視装置だった。スピード違反車のナンバーを撮影するため台座の上で角度を変えていた。

 この監視装置、モスクワでは1日に本格稼働したばかり。警棒につないだ革の輪を手首に通してクルクルと振り回し、歩道で一服している交通警察官に話し掛けてみた。監視対象は速度だけでなく、バスなどの専用レーンの違反走行も。調べてみると、市内には55カ所に設置済み。年末までに150カ所になるという。

 先日、こんな話がロシア紙コメルサントに載った。旧ソ連時代の車「ジグリ」に乗った年金生活のおじいさんが監視装置で摘発された。211キロの速度違反だったがスーパーカーじゃあるまいし、そんな速度が出るわけない。警察は装置の電源を切らざるを得なかったそうだ。

 ところで、取材帰りに渋滞に遭った。バス専用レーンを示す「A」マークの車線を助手席の車窓から眺めていて監視装置を見つけ、話し掛けた。しかし運転手は「そもそもバス路線じゃない。バスは通らない」と言った。ロシアだとうなるしかなかった。(原誠司)