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ブリュッセル “良識”音立てて崩せ

2011年11月22日

 ブリュッセルの日本料理店で「みそかつラーメン」というメニューを見て、頭がこんがらがった。あの「みそかつ」がラーメンに載っている? すぐにそれは「かつ」と「みそラーメン」の組み合わせだと分かったが、それにしてもあまりお目にかからないものだ。

 もちろん、一般的なラーメンもあり、大人気。日本人はほとんどいない長蛇の列に並んだが、進まない。営業時間が確か2時間半と短いため、自分のところまで順番が回ってくるか気が気でない。テーブルを見て遅さの理由が分かった。

 ゆっくり、ゆっくり、ラーメンをスパゲティのようにれんげの上で箸に巻き付けては、ひと口食べると、おしゃべりである。「それでは麺がのびてしまう」と余計な心配をしたが、さらに物足らないのは麺をすする音が聞こえないことだ。

 その光景を見て、パリ在住の日本人の話を思い出した。彼は「どうしても音を立てられない」というフランス人女性に食べ方を指導。「ずずずーっ」とやれるようにし、「無意識に文化的な抵抗感が働いてできないだけであることを証明した」と威張っていた。

 そんなことは証明してもらうまでもないが、音を立てた方がラーメンは一層、うまさを増すことをブリュッセルの人々も知っていて損はない。そう思った。(有賀信彦)