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ソウル 送別の宴うれし苦し

2011年12月02日

 ちょうど2年間の韓国勤務が終わる。3度目の今回も帰国間近になり、前回2度の勤務時と同様の“試練”が待っていた。「オレと一杯やらずに帰るつもりか」。帰国の便りを聞き付けた当地の人々から送別会の誘いが飛び込んでくるのだ。

 もともと酒好きなので、勧められるとグイグイやってしまう。連日の酒席は体を壊しかねないと思って、送別会の回数を減らそうと今回は離任状の郵送を遅らせるなどし、地元の人への帰国連絡を先延ばしにした。

 こうした浅知恵が裏目に出た。帰国予定の2週間ほど前から、送別会の誘いが殺到してしまったのだ。「○○日の夜は?」「いやあ先約があって」「じゃあ昼間にしよう」。せっかくの好意を断るわけにもいかず、平日も週末も関係なく、昼夜を問わず、ビールに焼酎、マッコリとアルコール漬けの毎日。

 こうした現況を欧米で長く暮らした経験のある邦人駐在員に話すと、彼は言った。「ありがたいことじゃないですか。欧米ではそんな濃密な経験はできませんよ」

 その通りと思う。日本と韓国の間には、竹島(韓国名・独島)の領有権や歴史をめぐる問題がある。しかし韓国人ひとりひとりは親切な人が実に多い。本稿を執筆中、携帯電話が鳴った。「一杯やる時間まだある?」

 (城内康伸)