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カイロ 自由選挙 後戻りせず

2011年12月27日

 「生まれて初めての体験。ずっとこの日を待ってたわ」

 エジプトで、ムバラク政権崩壊後の新たな国のあり方を問う人民議会選。11月末、カイロ市内の投票所で会った主婦(60)は、声を弾ませた。

 旧政権時代の選挙は茶番だった。野党への妨害や不正が横行、投票前から与党圧勝が分かりきっていたため国民の多くは投票した経験がない。

 今回は、投票所前は朝から順番待ちの行列が数百メートルに。折り畳みいすを持参する人も。投票用紙を受け取ると、多くの人が意中の候補や政党を選ぶのにじっくり時間をかけ1票の重みをかみしめた。

 会場では「私に交付された投票用紙は、公印が押されてない。ちゃんと有効になるのですか」と係官に詰め寄る女子大生(20)も。

 一方、投票日前後も市中心部のタハリール広場は、軍の暫定統治に反発する若者らが占拠を続けた。一角に掲げられた横断幕には、デモで亡くなった数百人の名が記されている。5、6人の若者が、遺影を掲げ練り歩いていた。

 「僕らはこの道を歩き続ける。君は安らかに眠れ」

 選挙は全国を3地区に分け来月初めまで続く。多くの犠牲を払った民衆革命。強権支配の時代には、決して後戻りさせないという思いが、街にあふれている。(今村実)