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銀川 かみしめる日本の味

2012年01月13日

 「あったかいご飯に、缶詰。これが仕事を終えた後の幸せなひとときなんです」

 中国中北部、寧夏回族自治区の区都銀川に単身赴任している日本人駐在員が、かみしめるように言った。

 寧夏は沿海部のように産業が集積しているわけでなく、これといった人気観光地もない。ゆえに、訪れる日本人ビジネスマン、旅行客は決して多くない。常駐しているのは企業駐在員や大学の研究者、留学生ら15人ほど。むろん、街に日本料理店などなく、食べたければ、自ら調達するほかない。

 くだんの男性は、愛知県に本社がある大手工作機械メーカーから現地工場に派遣されている従業員。日本から数カ月に1回、送られてくる缶詰などが、食卓に並ぶ唯一の「和食」なのだという。

 「すしとか、ちゃんとした日本食が欲しくなったら?」と別の従業員に向けると、「週末を利用して、飛行機で北京へ行き、夜と翌朝、昼と3食、和食を食べ尽くします。寧夏に戻る前には、日本食材店で納豆などを買いだめします」。

 北京-銀川間は900キロ。飛行機でも半日がかり、か…。事情が分かっていれば、北京の日本食材店で気の利いたものを見つくろって持参するんだった。

 この正月、かの地の人たちは、どのように過ごされたのだろう。 (朝田憲祐)