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アイラ島 美酒は苦難の果てに

2012年01月25日

 アイラ島。英スコットランドの洋上に浮かぶ人口3500人の島はウイスキー愛好家の聖地だ。ボウモア、ラフロイグなど8つの蒸留所が立つ。グラスゴーからプロペラ機で30分の距離なのだが、時にウイスキーへの強い“信仰”の証しを求められるのが一筋縄ではいかないところ。

 記者が最初に訪ねたのは一昨年の夏。飛行機は出発直前に島周辺の悪天で中止。翌日午前の代替便もだめで、夕方まで待ってやっと飛び立つことができたが、1時間半たっても着かない。またも、島の空港周辺の状況が悪く上空で旋回し続けている。

 「もう一度、着陸を試みてだめならグラスゴーに戻る」と機長のアナウンス。ウイスキーファンが乗客の大半を占める機内は「1日半辛抱した揚げ句、だめなのか」と殺気立ったが、直後に無事、着陸し、割れるような拍手に一変した。

 昨年末には仕事でアイラ島に行くことに。ところがグラスゴー空港は銀世界。「行くのは無理か」と最悪の事態を覚悟したが、あっさりアイラ島へ。拍子抜けしたが「2日前は嵐で飛行機どころではなかった。まあ、いつものことだけど、それがアイラなのさ」と島の人。「苦難の末に美酒は与えられん」。そんな、ウイスキーの女神のささやきが聞こえてきそうだった。(有賀信彦)