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モスクワ 大名行列抗議の警笛

2012年01月27日

 自宅や支局が面したモスクワ中心部クツゾフスキー大通りでは、多い時で1日数回、プーチン首相やメドベージェフ大統領の「大名行列」が見られる。

 行列の10分ほど前に交通警察が登場。首相らが通る方向の片側4車線を通行止めにし、反対車線の一般車はその場に停車させられる。全車線から一般車が側道などに退避させられることもある。

 準備が整うと「お通り」だ。首相らの乗る黒塗りで胴長のベンツが前後左右に10台ほどの護衛車を伴い時速100キロ前後で駆け抜ける。

 おもしろいのは、一行が通る直前。待たされたドライバーらが一斉に車の警笛を鳴らして抗議するのが常だ。歩道にいる記者と目があった1人が車窓を開け「(首相は)激励と勘違いしているだろうな」と苦笑いした。

 昨年12月に全土で相次いだ国民の抗議集会で、参加者は「プーチンなきロシアを」と声を上げた。しかし首相はこうした国民の声を意に介していないとも報じられている。

 政界に影響力を持つロシア正教会の最高指導者は7日、テレビで「政権が抗議に鈍感なら、自浄能力がないことを示すことになる」と苦言を呈した。首相は最近、側近らの諫言(かんげん)に耳を貸さず「裸の王様」化も指摘される。「行列」への抗議の警笛は、そんな首相の姿を垣間見る気持ちにさせる。(原誠司)